患者さまへ

各種疾患・治療法

心筋症・弁膜症

はじめに

心臓は全身に血液を送り出すポンプの役目をしています。1分間に約5リットル、1日に約10万回、私たちが寝ている間も休まず動き続けています。心臓の中は4つの部屋(左心房、左心室、右心房、右心室)に分かれています。各々部屋には扉がついており、その扉を「弁」と呼びます。左心房と左心室の間に「僧帽弁」、左心室と大動脈の間に「大動脈弁」、右心房と右心室の間に「三尖弁」、右心室と肺動脈の間に「肺動脈弁」があります(図)。弁は血液が逆流しないようにできているために一方向にしか開かないようになっています。


心臓弁膜症(弁膜症)とは

先ほど弁を扉に例えましたが、扉がうまく開かなくなった状態を「狭窄症」、うまく閉じなくなった状態を「閉鎖不全症」と呼びます。弁は4つあり、それぞれ狭窄症と閉鎖不全症がありますので計8つの弁膜症が起こりえます。実際は狭窄症と閉鎖不全症を両方有することも多く、また連合弁膜症といって複数の弁が障害を来たすこともあります。代表的なものとして(1)大動脈弁狭窄症 :大動脈弁が充分開かない状態です。 左心室から大動脈へ血流が障害されます。(2)大動脈弁閉鎖不全症: 大動脈が完全に閉じない状態です。大動脈から左心室へ血液が逆流します。(3)僧房弁狭窄症:僧帽弁が充分に開かない状態です。左心房から左心室へ血流が障害されます。(4)僧帽弁閉鎖不全症 :僧帽弁が完全に閉じない状態です。左心室から左心房へ血液が逆流します。その他、三尖弁閉鎖不全症などがみられます。


心臓弁膜症の原因

以前はリウマチ性のものが多かったのですが最近では高齢化に伴う動脈硬化性の弁膜症(大動脈弁狭窄症)や心筋梗塞などに伴う虚血性の弁膜症(僧房弁閉鎖不全症)が増加しています。


心臓弁膜症の診断と治療

現在日本循環器学会から「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)」が報告されています。このガイドラインは医療関係者向けですが一般の方もWeb上で参照することが可能です。

弁膜症の重症度評価や治療方針、特に手術の適応について、標準化された治療が可能になっています。
最近の心臓超音波(心エコー)領域の進歩はめざましく、エコー機器の高性能化および診断技術の向上が弁膜症治療に大きく貢献しています。


心臓弁膜症の治療

薬物療法と非薬物療法(手術、カテーテル治療)に大別されます。治療方針は先ほどの ガイドラインにありますようにほぼ確立されてきたと思われます。大切なことは弁膜症自体は自然に治ることはないので、弁膜症の手術のタイミングを逃さないことです。弁膜症は、進行すると弁だけでなく心臓の筋肉にダメージが起こるため、弁だけ治療しても心不全が残り心臓は元通りに働くことができなくなります。


弁膜症の話題
パーキンソン病治療と弁膜症

パーキンソン病治療剤の中で麦角系(ばっかくけい)ドパミン作動薬と呼ばれる薬は、脳内の神経伝達物質であるドパミンの受容体を刺激して、パーキンソン病の症状である手足のふるえ、筋肉が硬くなる、動作緩慢、歩行障害などを改善します。頻度は少ないのですが麦角系ドパミン作動薬において心臓弁膜症があらわれることがわかってきました。ただ健康な人でも軽度の弁逆流は見られることがあるので定期的に心エコー検査を行い、お薬を続けるかどうかの判断は医師が総合的に判断します。服用を急に止められますと、急激な体温上昇、筋肉のこわばりなどの症状を伴う悪性症候群が生じる可能性がありますので、自己判断での服用中止は避けてください。


最後に

岡山大学循環器内科では高い技術をもった心臓超音波、心臓カテーテル検査などによる診断を行っています。またガイドラインに沿った標準的治療と個々の患者さんに合わせた治療をバランスよく行っています。外科的治療に対しては岡山大学心臓血管外科と共同して最適な治療を行っています。


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