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ペースメーカー・植込み型除細動器・心室再同期療法・遠隔モニタリング/デバイス抜去

ペースメーカー

徐脈性不整脈の治療として、ペースメーカーは社会的にも認知されてきており、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。脈が極端に遅くなると、心臓から送り出される血液が少なくなり、脳の血液が不足し、目の前が暗くなったり、もっとひどい場合は倒れてしまったりします。それを、防ぐのがペースメーカーです。本体は、前胸部の皮下に植込まれ、リード線は本体から静脈を通り心臓の筋肉に留置されております。

自分の脈が正常に働いているときにはペースメーカーは働きませんが、自分の脈が設定された脈拍数より少なくなると、ペースメーカーから心臓に電気信号を送り、心臓を刺激し収縮させます。
最近の科学技術の発達により、本体も非常に小さくなり、患者さんの負担も少なくなりました。また、以前は脈拍を保つ最低限の仕事しかできませんでしたが、現在は様々な機能が増え、体の動きに応じて脈拍数を変えたり、心臓の上の部屋と下の部屋を連動させて働かせたり、より本来の心臓の動きに近い方法で刺激をすることができるようになりました。

また2017年から、デバイス本体が非常に小さくなったためリードと一体化し、本体ごと心内に植え込むことが可能となりました。一般的にリードレスペースメーカと言われておりますが、適応のある患者さんに植え込まれております。


植込み型除細動器

体内に植込まれる機械には脈が遅くなる不整脈だけではなく、頻脈性の不整脈の治療もしてくれるものがあります。それは、植込み型除細動器 (Implantable Cardioverter Difibrillator; ICD) といい、本体とリード線の間で心臓を挟み込み電気ショックを流すことにより心室頻拍、心室細動といった致死的な不整脈を治療してくれます。

一度致死的な不整脈が出現した人は、薬のみの治療よりも植込み型除細動器で治療するほうがより長生きできるという報告1-3が数多く認められます。また、最近では、半自動体外式除細動器 (Automated External Defibrillator; AED) で命が救われる人が増えてきていますが、初回の致死性不整脈で命を落としてしまう人も多く、一度も発作は起こしてなくても致死性不整脈の危険がある人も植込み型除細動器の適応になる場合4-6があります。
こちらも技術の進歩により、以前は本体が大きく腹部にしか入らなかったのが、ペースメーカーと同じように、本体は前胸部に、リード線は静脈を通して心臓まで持って行くことが可能となりました。

皮下植込み型除細動器

これまでの植込み型除細動器はリードを血管内から心内へ留置する必要がありました。しかし、ペーシングなどが必要のない患者さんなどには、リードと本体がすべて皮下へ植え込む皮下植込み型除細動器が使用できるようになりました。


心臓再同期療法

更に、最近では不整脈だけではなく心不全の治療もしてくれる機械もでてきております。心臓再同期療法 (Cardiac Resynchronization Therapy; CRT) といい、心臓の働きが悪く更に心臓を伝わる電気信号が遅くなっている患者さんに適応になります。正常の場合は、心臓が効率よく血液を送り出すために、電気信号が心臓に順序よく伝わっています。ところが、心臓の電気の流れがとぎれると、電気信号が早く到達するところと、遅く到達するところができてしまい、心臓の動きにばらつきが生じ効率よく収縮できなくなります。それを改善するのが心臓再同期療法で、心臓を2本のペーシングリードで挟み込むようにして刺激をします。すると、ばらばらに収縮していたのが、同時に収縮できるようになり、非常に効率がよくなります。

同期できていない心臓 心臓再同期療法後

実際に効果の出る場合は、ベッドから起きられなかったのが、自由に外を動けるようになったり、2階まで階段を昇れなかったのが、4階まで昇れるようになったりする患者さんもおられますが、中にはあまり効果が認められない患者さんもおられ、更なる研究が進められております。大規模な研究でも、心臓再同期療法もしくは、除細動機能のついた心臓再同期療法 (CRT-D) により、心室内伝導障害を伴った心不全患者の生命予後を改善するという結果7,8がでており、適応は徐々に広がりつつあります


  1. A comparison of antiarrhythmic-drug therapy with implantable defibrillators in patients resuscitated from near-fatal ventricular arrhythmias. The Antiarrhythmics versus Implantable Defibrillators (AVID) Investigators. N Engl J Med. 1997;337:1576-83.
  2. Connolly SJ, Gent M, Roberts RS, Dorian P, Roy D, Sheldon RS, et al. Canadian implantable defibrillator study (CIDS) : a randomized trial of the implantable cardioverter defibrillator against amiodarone. Circulation. 2000;101:1297-302.
  3. Connolly SJ, Hallstrom AP, Cappato R, Schron EB, Kuck KH, Zipes DP, et al. Meta-analysis of the implantable cardioverter defibrillator secondary prevention trials. AVID, CASH and CIDS studies. Antiarrhythmics vs Implantable Defibrillator study. Cardiac Arrest Study Hamburg . Canadian Implantable Defibrillator Study. Eur Heart J. 2000;21:2071-8.
  4. Moss AJ, Hall WJ, Cannom DS, Daubert JP, Higgins SL, Klein H, et al. Improved survival with an implanted defibrillator in patients with coronary disease at high risk for ventricular arrhythmia. Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial Investigators. N Engl J Med. 1996;335:1933-40.
  5. Buxton AE, Lee KL, Fisher JD, Josephson ME, Prystowsky EN, Hafley G. A randomized study of the prevention of sudden death in patients with coronary artery disease. Multicenter Unsustained Tachycardia Trial Investigators. N Engl J Med. 1999;341:1882-90.
  6. Moss AJ, Zareba W, Hall WJ, Klein H, Wilber DJ, Cannom DS, et al. Prophylactic implantation of a defibrillator in patients with myocardial infarction and reduced ejection fraction. N Engl J Med. 2002;346:877-83.
  7. Bristow MR, Saxon LA, Boehmer J, Krueger S, Kass DA, De Marco T, et al. Cardiac-resynchronization therapy with or without an implantable defibrillator in advanced chronic heart failure. N Engl J Med. 2004;350:2140-50.
  8. Cleland JG, Daubert JC, Erdmann E, Freemantle N, Gras D, Kappenberger L, et al. The effect of cardiac resynchronization on morbidity and mortality in heart failure. N Engl J Med. 2005;352:1539-49.

心臓植込み型デバイス遠隔モニタリング
遠隔モニタリングとは?

これまで、ペースメーカーや植込み型除細動器,心臓再同期療法などの心臓植込み型デバイスの情報は、外来でチェックしないと分かりませんでした。しかしながら、植込み型デバイスの情報を中継機器と電話回線を介して自宅からサーバーに送ることが可能になり、医療者はその情報をインターネットによって確認することができるようになりました。(図)

これにより、植込み型デバイスの follow up に関する負担を、患者、医療者双方において軽減することが可能であり、デバイス情報をモニタリングしていることにより、不整脈イベントや機器異常などのイベントを早期に捉えることができます。特に異常の無い場合などは、機器チェックのための外来受診回数を減らしても安全であることが証明されております1-2。

岡山大学病院では、臨床工学技士、看護師などを含めチームで遠隔モニタリングを運用しております。また、当院だけでなく中四国の50施設以上の病院と連携し、協力して運用しており登録患者数は700人近く(2012/9/19まで)になります。3

この分野は、今後の遠隔医療のニーズと相まって広がって行くことが予想され、中四国のデバイスセンターとしての役割を果たすべく、日々努力を重ねております。


  1. Varma N, Epstein AE, Irimpen A, et al. Efficacy and safety of automatic remote monitoring for implantable cardioverter-defibrillator follow-up: the Lumos-T Safely Reduces Routine Office Device Follow-up (TRUST) trial. Circulation 2010;122:325-32.
  2. Crossley GH, Boyle A, Vitense H, et al. The CONNECT (Clinical Evaluation of Remote Notification to Reduce Time to Clinical Decision) trial: the value of wireless remote monitoring with automatic clinician alerts. J Am Coll Cardiol 2011;57:1181-9.
  3. 西井伸洋、伊藤 浩、「遠隔モニタリング実践マニュアル-植込み型デバイス活用術- 」文光堂 ?. チームで運用する遠隔モニタリング, p 116-136.

デバイス感染のマネージメント -エキシマレーザー植込み型デバイス抜去システム-
エキシマレーザーとは?

植込み型デバイス植込み患者数は年々増加しておりますが、それに伴いデバイス感染を発症する患者さんも増えてきております。異物に感染をおこすと、それをすべて除去しなければ感染は完治しないことが多いです1。単純牽引でも抜去できない場合は、開心術が必要になることもありました。しかしながら、本邦でも2010年からデバイスを全抜去するのに有用なエキシマレーザーシステム(図)が使用可能となりました。岡山大学病院でも積極的に導入しており、これまで300例以上の患者さんに対しこのシステムを使用し抜去に成功しております。

  1. Wilkoff BL, Love CJ, Byrd CL, et al. Transvenous lead extraction: Heart Rhythm Society expert consensus on facilities, training, indications, and patient management: this document was endorsed by the American Heart Association (AHA). Heart Rhythm 2009;6:1085-104.
  2. Wilkoff BL, Byrd CL, Love CJ, et al. Pacemaker lead extraction with the laser sheath: results of the pacing lead extraction with the excimer sheath (PLEXES) trial. J Am Coll Cardiol 1999;33:1671-6.

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