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卵円孔開存症に対するカテーテル治療

潜因性(奇異性)脳梗塞の再発予防を目的とした経皮的卵円孔開存閉鎖術のご説明

岡山大学循環器内科では2010年より,全国に先駆け奇異性脳塞栓再発を目的として経皮的卵円孔開存閉鎖術を実施してきました。その後国際的な研究によりこの治療の有効性が証明され,2019年5月末に国内でも新しい医療器具として正式に承認されました(保険診療はまだできません)。


1.卵円孔開存症と脳梗塞について

心房中隔は心臓の中の右心房と左心房の間を隔てる壁です。この壁のどこかに何らかの理由で穴が開いている状態を心房中隔欠損症といいます。なかでも心房の壁が一部弁のようになって,くっついたり離れたりしている状態を卵円孔開存症とよびます。健康な成人の20~25%にあると言われています。
通常の状態では卵円孔開存があっても血液の漏れは起こらず,なんら問題はおこりません。ところがある特定の状況(お腹に圧力のかかる状況,咳や排便など)では右心房の圧力が一時的に上がり,わずかな血液の漏れが起こることが起こります(青線)。この時に静脈の中にある小さな血液の塊(血栓)が卵円孔を通過して左心房に流れこみ,さらに頭の血管に到達すると頭痛,めまい,視野異常(暗黒感,輝き)がおこります。血栓が大きい場合には脳の血管に詰まって脳梗塞を起こします。
重症の場合には手足の麻痺やことばの障害などの後遺症を残すことがあります。このような脳梗塞を奇異性脳梗塞とよび,他の原因(高血圧,動脈硬化,不整脈など)による脳梗塞と区別しています。奇異性脳梗塞は比較的若い年齢(40歳前後)の成人に多いことも特徴です。


2.卵円孔開存が原因の脳梗塞に対するカテーテル治療とは

卵円孔開存が原因で脳梗塞を発症した可能性のある患者さんでは脳梗塞再発することを予防するために,血液をさらさらにする薬(アスピリ,ワーファリン,新規抗凝固薬など)を使って血栓が作られることを予防する治療が広く行われています。一般にこの治療は有効ですが,薬は長期間(一生涯)服用する必要があります。薬を服用していても脳梗塞を再発する可能性があります。薬が効きすぎることで出血性合併症を起こす場合があり,抗凝固薬を服用している場合は運動を控える必要があり,女性の場合は生理中の過多出血,妊娠・出産の問題が生じます。このように薬による治療は有効ですが,社会活動を行う上で,さまざまな制限が加わります。
10年ほど前よりこれまでの薬物治療に加えて特殊な器具で卵円孔開存を閉鎖することで,脳梗塞の再発をより軽減させることができないか,さまざまな研究が行われてきました。そして2017年に通常の薬物療法に加え,カテーテルで卵円孔開存閉鎖術を行うことによって脳梗塞の再発を大きく軽減させることが証明されました。欧米では既に通常の治療法として定着しつつあります。


3.治療に用いる閉鎖栓と治療法について

アンプラッツアーPFO閉鎖栓はニチノールと呼ばれる特殊な金属(形状記憶合金)の細い線から作られたメッシュ状の閉鎖栓です。右の図のような形をしており,真ん中の部分がくびれた形をしています。両側の広がった部分(ディスク)とくびれた部分(ウエスト)には,特殊な布(ダクロン)が縫い付けられています。この布は,心臓の手術の時に利用されるものと同じ成分です。このくびれた部分を心臓の卵円孔の部分に合わせるように入れて,左右の広がった部分で穴の両側から挟みこんで,穴を閉じます。
この閉鎖栓を使った卵円孔閉鎖術はこれまでに10万例を越える治療が行われてきています。国内でも同じ素材を用いた先天性心疾患(心房中隔欠損症)にカテーテル閉鎖術はすでに1万人以上に行われ,良好な治療成績が報告されています。
閉鎖栓はMRIにも対応していますので,治療後はこれまで通り必要に応じてMRI検査を受けることができます。
カテーテル治療は,血栓が脳の血管に流れ込む穴を閉じることによって脳梗塞の再発を予防することを目的にしています。このため他の原因で起こる脳梗塞(高血圧,動脈硬化,不整脈など)まで予防するものではありません。これらの原因による脳梗塞に対するリスク は,一般の方と同じになり,生活習慣病の予防は大切です。

この治療法は,通常のカテーテル検査と同様な方法で行われます。カテーテル操作中には,必要に応じて全身麻酔もしくは局所麻酔を行います。右足のつけ根から直径3mmくらいの管(カテーテル)を心臓に進め,卵円孔を通過させます。その管の中に閉鎖栓を折りたたんだ状態で挿入し,卵円孔の両側でそれぞれの傘を広げます。閉鎖栓が心臓の目的の部位にきちんと留置できているかどうか,レントゲンによる透視像と心エコー(経食道エコーや心腔内エコー)をつかってモニターしながら,安全を確認して留置します。治療前から血栓予防の薬(アスピリン)を1日1回服用し,治療後6か月まで続けます。治療前から服用している薬は継続します。治療後の薬の処方内容は脳卒中の先生の指示をお守りください。
この治療を受けた後は2日間入院していただき,問題がなければ退院となります。退院後は1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,1年後,その後は1年に1度,最終的に治療後3年間,治療が安全に行われたかを確認します。これらの検査は通常行っている検査と同じです 。

卵円孔を通過した管から閉鎖栓を広げ 心臓の壁に合わせ 安全を確認して切り離します
卵円孔を通過した管から閉鎖栓を広げ 心臓の壁に合わせ 安全を確認して切り離します

4.この治療のメリットとデメリット

カテーテル治療の優れた点は,外科手術を行わずに欠損孔をふさぐことができます。手術による胸の傷は避けられます。手術では欠損孔をふさぐために人工心肺を用いて心臓をいったん止める必要がありますが,この治療では必要ありません。
カテーテル治療の欠点は,すべての卵円孔開存症が治療できるわけではないことです。まれではありますが,穴の位置が閉鎖栓を入れるには適していない場合にはこの方法による治療は難しくなります。また治療を行うことができた場合にでも,閉鎖栓と心臓の壁の隙間から最初のうちわずかな血液のもれが残る場合があります。ただし閉鎖栓が自分の心臓の膜で覆われる過程(通常3~6か月)で完全に閉鎖されます。心臓の中に留置された閉鎖栓は,取り換えたり外したりすることはできません。


予想される合併症と危険性

この治療に関して,これまでの国内,海外の治療経験により以下のような合併症が起こる可能性があることが報告されています。

  1. 心臓壁,血管の穿孔
  2. 閉鎖栓の脱落
  3. 不整脈
  4. 血栓症,塞栓症
  5. カテーテル挿入部からの出血や血腫(内出血)
  6. 頭痛
  7. 造影剤に対する薬物アレルギー
  8. 感染症
  9. その他(ショックなど)

閉鎖栓がうまく留置できない場合には,治療の途中であれば安全に引き戻すことが可能です。万一引き戻せない場合,または留置した後体の中で位置がずれてしまった場合には,閉鎖栓を取り除くために緊急に外科手術を必要とすることもあります。このようなことがないよう,担当医師は万全の注意を払って治療を行います。


問い合わせ等連絡先

治療の内容に関して
岡山大学循環器内科 医師 赤木禎治,中川晃志,三木崇史
住所:〒700-8558 岡山市北区鹿田町二丁目5番1号
TEL:086-235-7351(医局)
e-mail:
*患者さま個人からのお電話、FAXでのご相談は受け付けておりませんので、ご了承願います。

外来受診(予約)に関して
岡山大学病院 TEL:086-235-7920(外来A受付)

入院に関して
岡山大学病院 TEL:086-235-7870(東7階病棟)


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