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各種疾患・治療法

狭心症・心筋梗塞治療

狭心症・心筋梗塞治療 担当医:月~金曜日の全ての外来医で担当致します

心臓は一般的に3本の冠動脈(右冠動脈、左前下行枝、左回旋枝)という栄養血管によって養われています。
この冠動脈が狭くなったり、つまったりすることで心臓への血液の供給が不足し、狭心症心筋梗塞といった冠動脈疾患を発症します。
冠動脈の壁にプラークというゴミがたまることで、血管の内腔が狭くなりますが、このような方は糖尿病高血圧高コレステロール血症喫煙肥満などの危険因子を持っていることが多いです。


狭心症とは

狭心症 冠攣縮性狭心症

階段や坂道をあがったりすると心臓に負担がかかります。このような状態では安静にしている時にくらべて心臓は何倍もの血液を必要とします。プラークがたまって冠動脈が狭くなってしまうと、心臓に負担がかかった時、それに見合う十分な血液を送り込むことができず、血液が不足した状態になり、心臓は苦しくなります。この状態を狭心症といいます。胸の締め付けられるような痛みは典型的な症状ですが、のど、肩、腕などの痛みや、息切れが症状の場合もあります。肩こりと間違うこともあります。冷や汗を伴うこともあります。狭心症の症状は安静にすると数分で症状がおさまるのが特徴です。この時点で適切に診断、治療が行われれば、心臓へのダメージはほとんどありませんので早期に専門医の診察を受けることが大切です。症状が出るということは危険な状態であることの心臓からの警告のようなものですが、狭心症のなかには全く症状がでない場合もあります。特に糖尿病や高齢者の方にはこういったケースが多いようですが、このような場合には警告を無視した状況になってしまい、危険な状況に陥ることが心配されます。

また特殊な狭心症として 冠攣縮(れんしゅく)性狭心症という病態があります。冠攣縮性狭心症とは冠動脈自体が痙攣を起こしたようになって細く縮んでしまい、血液を十分送れなくなり狭心症を起こした状態のことです。冠攣縮性狭心症はプラークがたまって起こる狭心症とは異なり、早朝や夜間の安静時に発症しやすいのが特徴です。寒さの刺激やタバコがその誘因となることも多いです。一般的には冠動脈を拡張する内服薬にて治療ができます。


心筋梗塞とは

狭心症

心臓の血管がつまってしまい、心臓に血液がほとんど送られなくなり、心臓の筋肉が死んでしまう状態のことです。心筋梗塞を起こすと不整脈心不全心臓破裂等の合併症のために5~10%は死に至る怖い病気です。心筋梗塞は狭心症が進行して心筋梗塞になることもありますが、多くの場合はプラークが破裂して血管の中に血栓という血の塊を作って血管を塞いでしまうことが原因とされています。死んでしまった心臓の筋肉は基本的には生き返りませんが、早く治療すればするほど多くの心筋を助けることができ、後遺症も少なくなります。


狭心症が疑われる場合の検査は
運動負荷心電図

狭心症は運動したときに症状がおこるのが特徴で、その時に心電図変化も起こります。ですから安静時の心電図に異常がないからといって問題がないとはいえません。そこで運動した時の心電図の変化が診断に役立ちます。その方法として階段を昇ったり降りたりして心電図をとるマスター運動負荷心電図トレッドミルというランニングマシーンの上を歩いたり、エルゴメーターという自転車をこいで心電図を経時的に計測する検査を行います。


心臓超音波(心エコー)検査

心エコー検査では心臓の動き、弁膜症の有無、心臓にどれくらい負担がかかっているかみることができます。狭心症の方が症状のないときに検査を受けても異常がないことが多いです。狭心症が起きている状態では血流の悪くなった心臓の筋肉の動きが悪くなり、心エコーでも診断が可能となりますので、心臓に負担をかけるお薬を使いながら心エコーを行うような方法もあります。古い心筋梗塞の痕跡があれば、心筋の動きが悪いとか心筋が薄くなっていることで診断をつけることができます。


心筋シンチグラフィー

血液が十分流れているかどうかみる検査として心筋シンチグラフィーという検査があります。心筋シンチグラフィーではテクネシウムタリウムといった心臓の筋肉に集まる薬を使い、その薬が心臓にどれくらい行き渡っているかを画像で表すことができます。当院ではエルゴメーターで運動負荷を行い、運動して心臓に負担がかかった状態の時と安静にしている状態の時のそれぞれで心臓に集まる薬がどのように心臓に行き渡っているかどうか比較します。狭心症であれば運動時にのみ血流(薬の集積)が低下し、安静時には血流が回復した所見が得られます。心筋梗塞で心臓の筋肉が死んでしまっている場合には運動時も安静時も薬の集積が低下した所見を認めます。エルゴメーターができない場合は血管を広げるアデノスキャンという薬を使用します。正常な血管は広がり血流が増えるのに対し、プラークで狭くなった血管は広がらず、血流が増えないのでその差を画像としてとらえることができます。

冠動脈CT
冠動脈CT

当院では岡山画像診断センターと連携して冠動脈CTを行っております。心臓は常に動いているため、今まではCTで撮影することは困難でしたが、非常に性能の高いCTが導入され、3次元の画像が得られるようになりました。実際に冠動脈に狭いところがあるかどうか見ることができます。カテーテル検査とくらべると静脈から造影剤を注入し、撮影するだけなので非侵襲的です。CTで確実に診断がつけば、診断のためのカテーテルの検査を行わず、カテーテル治療を行うことも可能です。但し、脈が速いと画像が不鮮明になったり、動脈硬化が非常に強く冠動脈が石灰化しているような場合は診断が困難になるのが弱点です。


カテーテル検査(冠動脈造影)

実際に冠動脈の入り口までカテーテルという細い管を挿入し、そこから冠動脈に造影剤を流し、冠動脈の状態を動画で撮影する検査です。様々な検査方法について説明いたしましたが、やはり実際に血管が狭いかどうかが問題ですので、確定的な診断をつけるためには重要な検査です。冠攣縮性狭心症が疑われる場合は冠動脈の攣縮を誘発する薬剤を用いて攣縮が起こりやすいかどうか調べる検査をすることもあります。カテーテルは手首、肘、ソケイ部(足の付け根)のいずれかの動脈から挿入しますが、動脈からの検査のため検査後は十分な止血が必要になります。肘やソケイ部から検査した場合は検査後の止血の為に長時間曲げられず、苦痛が多いので当院では基本的には検査後の苦痛が比較的少ない手首からの検査をおすすめしております。通常の検査であれば検査時間は15分程度です。 カテーテル検査(冠動脈造影)

カテーテル検査(冠動脈造影)


冠動脈疾患の治療

急性心筋梗塞では緊急の検査、治療が必要です。多くの場合が緊急のカテーテル検査を行い、引き続きカテーテル治療を行うことになります。
病態が安定している狭心症の場合は、治療方法としては、病態に応じて、お薬の治療、カテーテル治療、バイパス手術を選択します。


お薬の治療

冠動脈の血流をよくするために、血をさらさらにする飲み薬や、冠動脈を広げる飲み薬や貼り薬を使用します。血圧や脈拍の上昇が心臓に負担をかける原因となるので、それを抑えるベータブロッカーというタイプのお薬を使用することもあります。糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、喫煙、肥満が原因で冠動脈にプラークができていることが多いですので、その原因に対しても徹底的に治療いたします。お薬を使用しても特別な場合を除いて冠動脈プラークは小さくはならないものと考えておかなくてはなりません。お薬だけでは改善が見込めない場合や、お薬の治療を開始しても状態がよくならない場合はカテーテル治療かバイパス手術を行います。


カテーテル治療
治療前
治療後
治療前
治療後

カテーテル治療とは血管の中から行う治療です。冠動脈のカテーテル治療のメインとなるのは血管の中から狭いところを風船で広げることと狭い部分にステントという金網を入れるという作業です。風船で広げるだけでは再狭窄(治療したところがまた狭くなってしまうこと)が起こりやすいため、ほとんどの場合ステントを入れます。ステントを入れてもやはり再狭窄は2割前後起こりうるものです。しかし近年になってステントにお薬を塗ってある薬剤溶出性ステントが使用できるようになり、再狭窄は数%にまで抑えることができるようになりました。


バイパス手術

バイパス手術とは狭窄した先の冠動脈に他のところから血流をおくるための血管をつなげる手術です。心臓血管外科で行っていただきます。


さいごに

冠動脈カテーテル治療の道具やテクニックの進歩は目覚ましいものがあります。治療後の再狭窄の問題も薬剤溶出性ステントにより、解消されようとしています。しかし、従来のステント(薬剤溶出性ではないステント)であれば1ヶ月程度で中止できた抗血小板薬(血をさらさらにする薬)が、薬剤溶出性ステントを使用した場合には長期間内服しないとステントの中に血栓ができる危険性があるとされています。何らかの手術を受けたり、胃潰瘍などの出血するような病気にかかった場合には抗血小板薬がやめられないということは非常に問題になります。その他にも冠動脈カテーテル治療には細心の注意を払うべき点は沢山あり、治療方法も千差万別です。当院ではそれぞれの患者さんにベストと思われる治療方法をご提案させていただき、十分相談させていただいた上で治療を行うように努めております。
外来での診察やご相談は月~金曜日のいずれの日でもかまいませんので、ご遠慮なくいつでもご質問ください。


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