Research
臨床研究
心房細動の発症・維持に関わる病態解明、ならびに治療最適化へ向けた網羅的研究
心臓は、正常の場合、右心房にある洞結節から生まれる規則的な電気の刺激によって拍動します。心房細動(Atrial fibrillation: AF)は、心房内において心筋の電気的興奮が無秩序な状態に陥った不整脈です。AFでは心房収縮が損なわれ、心房内に血栓を形成しやすくなることから、心不全や脳梗塞などの血栓塞栓症の発症とリンクしており、循環器臨床において極めて重要な疾患です。
AFの発症・維持に関わる病態は未だ解明すべき点が多く残されており、解剖、病理、画像、心房機能、電気生理、バイオマーカー、ゲノムなどあらゆる側面からのアプローチが必要です。私たちは学内外の部署と連携し、AFの発症・維持に関わる病態解明に挑戦しています。また臨床においては、最新の画像診断ツールや高密度マッピングシステムを用いて、心筋症や先天性心疾患などハイリスク患者を含めた難治性AFに対するアブレーション治療の最適化を目指した研究を行っています。
我々のチームは和やかな雰囲気を大切にしています。一緒に研究に取り組んで下さる方は、ぜひ我々の教室までご連絡ください。
遺伝性不整脈症候群
高密度マッピングを用いた成人先天性心疾患患者における不整脈基質の同定と心筋焼灼戦略の確立
成人先天性心疾患(ACHD)患者において、不整脈は大きな臨床的問題です。しかしACHD患者は生来または修復手術によって解剖や構造が特殊であったり、複雑な不整脈基質を有していたりするため、不整脈を発症する基質の解明やアブレーション治療において、未だ多くの課題が残されています。私たちは最新の画像診断ツールや3Dマッピングシステムを用いて、ACHDに関連する複雑な不整脈の研究、新たな心筋焼灼治療戦略の確立に挑戦しています。ご興味のある方は是非ご連絡ください。
Macro-reentrant atrial
tachycardia in a post- Fontan
patient
Localized reentrant atrial
tachycardia in the PLSVC
Abnormal potentials localized in the left atrial posterior wall seen in
an AF patient with cor triatriatum sinister
AIを用いた心内心電図の解析
CIED(日本メドトロニック社製)の画像はトーアエイヨーより提供
遠隔モニタリングにて、植え込み型心臓電気デバイス(CIEDs)で捉えられるイベントを早期に覚知できるようになりました。しかしCIEDsの診断は今だに不十分で、不整脈診断、ノイズ混入などを正確に捉えるためには、医療者による心内心電図の解析が不可欠です。また遠隔モニタリングで送信されてくる不整脈イベントは非常に数が多く、全てを医療者により解析するには負担が大きいという現実もあります。
そこで私たちは人工知能(AI)に注目しました。AIより正確に心内心電図が解析できると、医療者の負担が減り、診断能力も上昇することが期待されます。既に我々の先行研究でAIはノイズイベントを十分に識別できることが示されています。今後、不整脈診断に関しても、AI技術の応用が期待されており、研究を継続しています。
リード抜去前の画像評価
- 上段 : CTではリードによる心穿孔疑いだが右室造影では心穿孔なしと判断した症例
- 下段 : CT、右室造影ともにリード穿孔と診断し、開胸を施行した症例
<図>
長期予後を見据えたPCIの追求
~多施設データを生かしたRegistry研究~
当院では複雑な冠動脈病変・背景疾患を持つ症例に対して、心臓CTの解析に基づいた病変形態・プラーク性状評価を十分に行った上で、積極的にPCIを行い、安全に長期予後を改善することを目指しております。
また中四国エリアの多くの関連病院と連携できるのは当科の大きな特色です。この強みを生かして、現在PCI症例の大規模レジストリーの構築を進めています。どのような症例が心臓CTやPCIによる恩恵をより多く受けることができるのかを幅広い視点から検討し、臨床の世界を変えるデータを中四国から発信することを目指しています。
心臓CTを用いた臨床研究
近年、CT機器の進化と専用の画像解析ソフトウェアの登場により、心臓CTは著しく進歩しており、心臓の機能や心筋性状を包括的に評価することが可能になっています。
私達は、脂肪肝や大動脈弁、冠動脈周囲脂肪の炎症、さらには心筋性状と心不全や弁膜症といった心疾患発症や予後との関連を調べています。
心エコーの臨床応用への新たな試み
心エコー診療は、心機能や心形態の評価において、3Dやストレイン、マルチモダリティ、AIを活用するなど、さまざまな最先端の試みを行っています。対象疾患は、Structure Heart Diseaseなど、すべての領域で診療や研究を行っています。
国内外の学術集会での発表、主要な国際ジャーナルへの論文掲載など、日常診療のみならず新たな知見を生み出すよう臨床研究にも力を入れています。
女性医師も幅広く活躍しており、若手医師もすぐに成長できるようサポートしています。ぜひ、一緒に活動しましょう。
心不全の臨床研究
当院では成人先天性心疾患や重症心不全症例などの診療を積極的に行っており、当院ならではの心不全症例を含め、多種多様な心不全に関する臨床研究を行っています。また、単施設研究に留まらず、多くの多施設観察研究および介入研究を通じて、心不全の病態解明や治療の確立に繋がる研究に日々挑戦しています。心不全の臨床研究に興味を持たれている方は是非、当研究室まで御連絡をください。
分子細胞生物学・AI・疫学を用いた心筋症研究
心筋症の研究は、
・遺伝子情報・iPSCsによる疾患モデル研究など分子細胞生物学的手法を用いた病態解明・治療法の探索研究、
・AIを用いた診断・不整脈予測の研究、
・難治性心筋症の疫学研究など最近のモダリティーを用いて行っております。
豊富な症例を元に、幅広い研究を行ってます。
心房中隔欠損症、卵円孔開存症に関する臨床研究
図は一例ですが、以前より長いトンネル長や心房中隔瘤は脳塞栓症を起こしやすいとされていましたが、心房中隔の高可動性やlow angleなPFOも奇異性脳塞栓症にハイリスクであることを示しました。
今後も診療のニーズや日々の臨床から生じる疑問に研究という形で答えを出し、この領域のトップランナーとして走り続けていきます。
成人先天性心疾患に関する研究
岡山大学病院では2000例を超える成人先天性心疾患(ACHD)の患者様が通院されています。当院の特徴として、Fontan手術後、Fallot四徴、大血管転位、修正大血管転位、Ebstein病などの複雑性先天性心疾患が多いことがあげられます。
研究面では、これら複雑先天性心疾患の長期予後の調査と、予後規定因子の探索、そして予後予測モデルの構築を行っています。また、心エコー、MRI、CT、心臓カテーテルなどのマルチモダリティーイメージングを用いて、複雑先天性心疾患の病態・解剖・血行動態の評価を行い、すみやかに臨床に寄与できる研究も行っています。
肺動脈性肺高血圧症の新たな治療方針に関する臨床研究
マシテンタンとリオシグアトの早期併用療法とマシテンタンとセレキシパグの早期併用療法で、同等の治療効果が得られるかを比較した多施設前向き研究(SETOUCHI-PH study)を行っています。
他にもシャント性心疾患関連肺高血圧症に対するTreat and Repairや肺移植症例に関する臨床研究を行っています。肺高血圧症に興味ある方は是非ご連絡ください。
循環器疫学と生物統計学 (RWD研究、臨床試験)
近年臨床研究の手法が飛躍的に発展し、これまで観察研究では難しかった薬剤や治療方法の効果を検証することが可能になっています。このような研究を行うためには統計専門家とのコラボレーションが大事ですが、研究者自らが臨床疫学や生物統計学の知識を有することも重要です。
私たちの医局では各領域の専門医と統計スキルを有するスタッフが協力し、複数のレジストリ研究、リアルワールドデータ研究、前向き臨床試験を行なっています。
研究の実践を通して臨床疫学や生物統計学のスキル習得に興味がある方は是非とも一緒に研究を行いましょう!
AIを用いた臨床研究
循環器内科では様々な検査を行っており、患者毎に多くのデータが蓄積されております。これらのビッグデータと機械学習を組み合わせることで、病気の状態判別、適切な治療方法の予測、予後の推測などを行うことが可能となっております。
人工知能を応用していることで、精密医療・個別化治療の具現化を目指しています。
循環器疾患のゲノム解析と臨床応用
近年、遺伝子配列解析技術の革新が進み、次世代シーケンサー等の機器の開発により、網羅的な遺伝子解析を行うことができるようになりました。しかし、循環器疾患では、遺伝の影響が示唆される疾患の大部分で未だ原因遺伝子の同定に至っていません。ゲノム医療の発達により既にがん診療は大きく変貌しましたが、循環器診療もまさに今、ゲノム医療の発達による変革の時期にあります。
私たちは、共同研究機関とともに網羅的な遺伝子解析を用いた原因解明とその臨床応用に日々挑戦しています。未来につながる循環器ゲノム研究に興味のある方は是非一度、当研究室まで御連絡ください。