各種疾患・治療法
大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症とは
概要
大動脈弁が石灰化等により開きにくくなることにより、心臓のポンプ機能が低下する病気です。大動脈弁狭窄症の原因として主に加齢性、先天的要因、リウマチ熱の3つがあげられます。最近では加齢性が最も多いと言われおり、高齢化に伴い増加傾向です。
症状
大動脈弁狭窄症の症状としては、症状が徐々に進行するため、自覚しにくいのが特徴です。軽度の段階では自覚症状はほとんど見られませんが、病気が進行すると、めまい、息切れ(心不全症状)・胸痛(狭心症症状)などを自覚するようになり、重症化すると失神や突然死を起こすとされております。
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)について
大動脈弁狭窄症の患者さんに対する比較的新しい治療方法です。従来の開心術(大動脈弁置換術)とは異なり、胸を開いたり心臓を止めることなく、カテーテルという管を用いて人工弁を挿入する治療です。患者さんの体への負担が少なく、治療時間は短く(およそ1時間)、入院期間も短い(約1週間)のが特徴です。心不全に対する非薬物治療
レントゲンの画像を見ながら、大動脈を経由して、人工弁(TAVI弁)を運び、適切な位置でふくらませて留置します。
岡山大学病院ハートチームについて
岡山大学病院のハートチームは、循環器内科(カテーテル治療専門、エコーの専門)、心臓血管外科麻酔科医に加えて、コメディカルは、臨床工学技士、人工心肺チーム、放射線技師、理学療法士、看護師によるハートチームでTAVIを担っております。岡山大学病院では、高齢の方のみならず、複雑かつ多岐に及ぶ併存疾患を有する患者さんにも安心して治療を受けられるような体制をとっております。
僧帽弁閉鎖不全症
概要
僧帽弁は、左心室が収縮するときに閉じて左心房への血流の逆流を防ぐ逆流防止弁です。この僧帽弁が何らかの原因でうまく閉じず、左心室から左心房に血液が逆流する状態が僧帽弁閉鎖不全症です。心臓は血液の流れを保とうと余分に仕事をし、また左心房や肺への血液がうまく流れにくい状態になります。病状が進行すると、心臓のポンプ機能が低下してきて心臓が十分な血液を送り出せなくなります。その結果、動いた時の息切れや横になると息苦しいといった症状が現れ、心不全状態を引き起こします。
治療
軽症から中等症の場合
薬による内科的治療が行われます。薬による治療は症状を軽くしたり、進行を抑制することによって心臓にかかる負担を軽減しますが、弁の逆流そのものを治療するわけではありません。
重症の場合
内科的治療では治療が難しい場合には、弁を根本的に治すために外科的手術による治療が必要となります。しかし、重症の僧帽弁閉鎖不全症の患者さんの中には、高齢で体力が低下していたり、心臓の機能が高度に障害されていたり、他の病気を患っているなどのため、手術時の合併症や死亡のリスクが高く、外科的手術の実施が難しい場合もあります。このような外科的手術の実施が難しい患者さんに対して、カテーテルを用いて僧帽弁閉鎖不全症を改善する治療法が経皮的僧帽弁接合不全修復術です。
経皮的僧帽弁接合不全修復術のシステム
MitraClip®(マイトラクリップ)は2018年より日本国内に導入された僧帽弁閉鎖不全症のカテーテル治療です。僧帽弁に植込まれるクリップ本体と、そのクリップを操作するためのカテーテルから構成されている医療デバイスです。
全身麻酔をかけて患者さんが完全に眠った状態で治療を行います。足の付け根の大腿静脈から血管内にカテーテルを通し、心臓の右心房まで進めていきます。クリップを治療部位まで進めるために、経食道心エコー画像およびX線透視画像を見ながら、右心房と左心房の間にある壁(心房中隔)の安全な部分に小さな穴を開け、カテーテルを貫通させます。経食道心エコーで僧帽弁の血液が逆流している部分を調べて、クリップが逆流部位の真上にくるように位置を調整します。両方の弁がしっかりとクリップにはさまれていることを確認し、クリップを閉じます。血液の逆流が良好に制御されたことを確認してから、クリップとカテーテルの接続を解除し、カテーテルだけ血管内から回収します。大腿静脈からカテーテルを抜いて、止血処置を行い、治療を終了します。
カテーテル治療のメリット
①身体への負担が少ない
胸を切開せず、人工心肺を用いて心臓を止める必要がありません。
②外科手術リスクが高い患者さんも治療可能
開胸手術が出来ない、もしくはハイリスクな患者さんも治療を受けることができます。
③治療後早期の社会復帰が可能
術後早期から歩行やリハビリが可能であり、術後1週間程度で退院できます*。
(*個々の患者さんの状態によって入院期間が延長する場合があります。)
カテーテル治療による弁膜症治療に御希望、関心のある方はお気軽に当科までお問い合わせください。