岡山大学循環器内科 岡山大学循環器内科
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末梢動脈疾患(PAD)と下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)

概要

末梢動脈疾患(PAD)とは、心臓および冠動脈以外の動脈に生じた動脈疾患の総称で、その中でも、最も多いのが下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)です。高齢化が進む我が国において、食の欧米化、糖尿病・透析患者の増加を背景に、動脈硬化に伴うLEADの患者さんは増えております。
下肢の機能低下のみならず、様々な心血管合併症(心筋梗塞や脳梗塞)を合併することが少なくなく、注意すべき疾患として知られております。一方、末梢動脈疾患の中には、血管炎や膠原病など、動脈硬化以外の原因で血流障害をきたす疾患もあり、診断に応じた治療が必要です。

症状

病初期には、足の冷感に始まり、進行すると歩くと足が痛くなる(だるくなる)といった“間欠性跛行(かんけつせいはこう)”をきたすようになります。重篤になると、安静時の痛みや潰瘍を形成することがあり、早急な治療が必要となりますので、ご相談ください。

治療

まず、原因となっている動脈硬化疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症)に対する治療を行います。喫煙されている患者さんには、禁煙指導を行います。間欠性跛行に困っている方には、運動療法を指導しております。下肢症状の改善および心血管合併症の予防のために、薬物治療を行い、それでも下肢症状の改善が乏しい場合には、後述のカテーテル治療(血管内治療)やバイパス手術などを行います。血管治療が難しい方には、補助療法として、血液浄化療法(LDL-アフェレーシス)や遺伝子治療(注射)を行うことがあります。


岡山大学病院における血管病診療

末梢動脈疾患(PAD)は様々な病態の総称であり、治療も多岐に渡ることから、岡山大学病院では血管病診療チーム(Vascular Meeting Okayama: VasMO)を結成し、より質の高い医療を提供することを心がけております。診療科は、循環器内科、心臓血管外科、腎臓内科・透析科、糖尿病内科、皮膚科、形成外科、整形外科、麻酔科(疼痛管理)など、多くの診療科で治療にあたっており、看護師(フットケア、創傷治療)、臨床検査技師、理学療法士が、メディカルスタッフとして診療を支えております。

皆様へ

閉塞性動脈硬化症の治療で最も大切なのは予防です。そのためにも、動脈硬化と向き合い、足を使った健康な生活を送ることを心がけましょう。もし、足の症状でお困りでしたら、遠慮なくご相談ください。我々は患者様、個々に応じたよりよい医療を提供いたします。

大動脈瘤・大動脈解離(遺伝性を含む)


心臓の病気だけではなく、血管が膨らんで破裂する大動脈瘤、血管壁が裂ける大動脈解離といった血管病も突然死を来す、恐ろしい病態です。その背景には高血圧を含めた生活習慣病による血管組織の傷害、さらに一部の患者様においては遺伝子異常(マルファン症候群、ロイツ・ディーツ症候群、エーラスダンロス症候群など)による血管組織の脆弱性などがあります。
これらの大動脈疾患は発症するまでは無症候のことが多く、CTなど画像検査で兆候を指摘されても、残念ながらそのまま放置になっている場合が多いのも現実です。しかしながら適切な治療、管理により突然死を回避することが可能です。
私たちは病態背景を考慮し、心臓血管外科と連携しながら、患者様に最適の治療選択を提供し、これらの大動脈疾患の進行抑制、再発予防に努めています。


特に、若年で大動脈の拡大などの異常を指摘された患者様におかれましては遺伝子を含めた詳しい検査と早期の治療介入が大切です。是非、当院への受診を御検討ください。