各種疾患・治療法
デバイス治療
デバイス治療
当院では徐脈性不整脈に対するペースメーカー植え込みなどの一般的なデバイス治療に加えて、後述のような様々なデバイスを用いて心疾患患者様に対する治療を行っております。
致死性不整脈による突然死を予防するためのデバイス治療
植え込み型除細動器(Implantable Cardioverter Difibrillator;ICD)は心室頻拍または心室細動といった致死性不整脈による突然死を予防するための機器です。
当科では致死的不整脈リスクを抱えた症例に対し積極的にICD植え込みを行っております。患者様の健康・生命を守ることは当然ですが、私たちはさらに豊富な臨床経験から得られたデータを元に解析を行い、それに基づいた最適な治療を患者様に提供しております。
現在、ICDは経静脈型(TV-ICD)、皮下植え込み型(S-ICD)の2種類あり症例に応じて選択しております。将来的には胸骨下にリードを留置する血管外ICD(EV-ICD)も導入予定です。今後、益々デバイス治療は進化を遂げ、患者様により安全で効果的な治療を提供できるようになると期待されています。
心臓再同期療法(CRT)による心不全治療/刺激伝導系ペーシング治療
心臓再同期療法(CRT)とは左心室の動きにズレが生じ、効率よく収縮できなくなった心臓をペースメーカーで挟み込んで同時じ刺激する事により効率よく収縮できるようにする治療です。このため左脚ブロックなど伝導障害を伴う心機能の低下した心不全に対する確立された治療法ですが、約30%の患者さんでは有効な効果が得られない事が分かっています。
私たちは心臓を刺激する部位を増やしたり、自己の伝導に合わせて刺激を行う事でより心機能の改善が得られる事を報告しています。また通常のペースメーカー治療では左室の動きにズレが生じ心機能が低下する事がありますが、刺激伝導系をpacingする事によりCRTと同様の効果が得られるため積極的に使用しております。
このように心臓植え込みデバイスをどのように使えば、患者様が良好な効果を享受できるかを日々研究し、それを実践しております。
同期できていない(ズレた)心筋
再同期(CRT)された心筋
先天性心疾患症例など特殊症例に対するデバイス治療
ペースメーカ、植込み型除細動器、心臓再同期療法などは、経静脈もしくは直接心外膜にリードを装着することが必要でしたが、先天性心疾患患者様など経静脈的リード留置できない場合は、適応があったとしてもその導入がしばしば困難になることがあります。
当院では、最新のデバイスを使用したり、また、心臓血管外科などと連携して様々な方法でデバイス治療を試みております。
心外膜リードと経静脈リードを用いた Hybrid CRT や、Fontan 症例に対する、下大静脈アプローチによるペースメーカ植込み、Fontan 症例に対する S-ICD 植込み、one and one half 症例に対する hybrid デバイス (心外膜 ICD+経静脈ペースメーカ) などを行っております。
(左) 下大静脈アプローチによるペースメーカ植込み例 (右) 心外膜リードと経静脈リードを用いたHybrid CRT
リード抜去術
植込み型デバイス植込み患者数は年々増加しておりますが、それに伴いデバイス感染を発症する患者さんも増えてきております。異物に感染をおこすと、それをすべて除去しなければ感染は完治しないことが多いです。また、リード損傷、デバイスのアップグレード時にもリード抜去が必要なケースがあります。
単純牽引でも抜去できない場合は、開心術が必要になることもありました。しかしながら、本邦でも2010年からデバイスを全抜去するのに有用なエキシマレーザーシステム(図上段)が使用可能となりました。それ以外も、エボリューションシース(図中段) 、メカニカルシース(図下段)など多くの医療機器を岡山大学病院でも積極的に導入しており、これまで300例以上の患者さんに対しこのシステムを使用し抜去に成功しております。